おぉきにおぉきに。

京都盆地の南の端っこでのんびり暮らす主婦のつれづれ。

『ペニー・レイン 東京バンドワゴン』を読みました。

2023年̪4月に刊行された日、もちろんすぐに買ったんですよ、買ったんですケド。

 

とうとうブログに書けないままになってしまってますが、すい臓がんの告知を受けて闘病中だった父がちょうどその4月に風邪ひいてそれが肺炎になって一気に体力が落ちて、3月には愛犬の散歩にも行けたのにその頃からもう歩くのも立ち座りの動作も厳しくなって。父のことが毎日の最優先だったので、読書どころではない状態でした。

 

夏の暑い日、夏が好きだった父は、苦しみながら、本当に苦しみながら、家族に見守られて息を引き取りました。

葬儀、四十九日、百箇日と法要もとうに終わってるんですが、闘病中には思わなかった無理して頑張らせたという後悔が押し寄せてきたリ、娘二人とも子供を産まなかったので家が絶えることでお仏壇やお墓のことなどを終末期の意識のある間中いつも気にしていたこと、父の人生は本当に幸せだったんだろうかと考えてみたり、数か月間やっぱり読書どころではない状態でした。

 

父を喪った2023年がようやく終わり、新しい年を迎え。

 

一方で私のパート勤めでもすったもんだでいろいろ変化がありまして、予想外のストレスを溜め込みつつ、父の闘病中ほぼ毎日お詣りしていたご近所の静かな神社さんへの参拝を四十九日あけて再開して今も毎日神様とお話ししているうちに、少しずつ本が読みたくなってきました。

 

大切な家族の旅立ちを見送り静かで寂しくなった実家を見た私には、やっぱり賑やかであたたかな家族の物語が必要でした。読書再開の一冊目は東京バンドワゴンと決めていました。

 

そしたらさ。

 

ベンジャミン……。

 

ここでも別れが。

 

我が家の末っ子のキジトラくんの名前は、東京バンドワゴンの堀田家の猫さんの中のポコ、というお名前を貰って名付けました。過去にお話の中で活躍したこともあるベンジャミンにしようかと思ったけど相方さんが渋ったので。長いからかな。

そんなこんなで堀田家のポコさんと同じくらいにベンジャミンも思い入れのある猫さんでした。くそう。膵がんも早く画期的な治療法が確立されて予後が良くなってほしいけど、猫の腎臓病もどうにかならんのか……今そういうフード売ってるけど予防と同じく治療ももうちょっと光が見えてほしい……。

 

堀田家も愉快な仲間達も、ご近所さん達も、みんな明朗快活で大らかであったかい人達。

でも、みんな泣いたり悲しんだり怒ったりもして、それが生きるということ。

私がこんな状態だからなのか、この『ペニー・レイン 東京バンドワゴン』はそれぞれのお話の終わりにあるサチさんの語りが、ものすごく沁みました。泣きながら読んでた。

 

何者になれなくても、ならなくても、ただもう生きているだけでいい。

誰かの人生と比べることもない。ただ自分の人生をまっとうするだけ。

 

私の父も、そう言ってるのかな。

あいにく私は就寝中に滅多に夢を見ないので、父が夢枕に立ちたくても立てないというか、いっそ父もサチさんみたいに魂がこちらに残ってて紺さんのように会話だけでもできればいいんですが。

 

私の実家、父方祖父母と同居で父が四兄弟の長男だったことで親族の本家ってことで、

お正月と氏神様のお祭りの時は狭い家に親戚大集合でめっちゃ賑やかで。私が小学生の頃はこの親戚一同そろって夏休みには泊まりで海水浴にも行ってました。

みんながウチに集まるのが、子供の私には本当に楽しいイベントで。(両親の苦労も知らず)

ただ、そういうイベントで集合してわいわいするのは可能でも、堀田家のように全員が同居となるとたぶん破綻してた、はず。

いくら家族でも、たくさんの人間が毎日毎日顔を合わせているのは、ものすごく難しいししんどいと思う。

堀田家は、それを自然に当たり前に暮らしてる。

どんな魔法を使えばできることなのかと一瞬思うけど、一人一人が人生に責任持ったうえでのLOVEだから可能なのかなと。堀田家の誰かが、困った時に「誰某の所為でこうなった」とか言わないし、自分の言動の選択に自覚的だし、自分のできることとできないことを知ってる。

その時その時の最善の道を、最善が難しければ次善の方法を、悩んで選んで生きていく。

考えること悩むこと、選ぶこと進むこと。人生とは、ただ生きること。

私の父も、生きました。頑張りました。神様、父の魂を褒めてやってね。

 

生きていれば、明日もしかしたら難病の治療法が発表されるかもしれない。今日はいがみ合った相手と明日は笑えるかもしれない。まっさらの明日は、希望も絶望も同じだけあるからできるだけ希望の道を選びたい。

 

それと。

この『ペニー・レイン 東京バンドワゴン』はやっぱり、『隠れの子 東京バンドワゴン零』とのリンクが!

隠れの子が堀田家のご先祖様の物語で、紺さん研人くんかんなちゃんのチカラがこのご先祖様からの遺伝子だってのは分かってて、ただ、ここで堀田州次郎という書付の和紙付き刀だの、かんなちゃん鈴花ちゃんから離れなかった白い仔猫の「るう」ちゃんだの!

現代の堀田家に、州次郎さん(の刀)とるうちゃん(の魂)が揃うことになるのは思ってもみなかったのでもうもうもうどうしましょうか!

紺さん研人くんかんなちゃんともしかしたら意思疎通ができるかもししれない……。ひょっとしたらそのエピソードが四年に一度の番外編になる可能性も……うわあ(悶絶中)。

 

堀田家の物語は、大樹が枝葉をひろげるように毎年大きくなっていきます。

広がれば広がるだけ、いろんな人生があって、共感できたり感心したり尊敬したり。

大河ドラマ並みの登場人物になってますが、堀田家という大河はたくさんの人生をのせて私達ファンを愉しませてくれています。

昭和のスターがどんどん鬼籍に入っている今日この頃、江戸時代から激動の昭和を乗り越えて令和まで続きながらも、古きよきものを大事にする『東京バンドワゴン』シリーズ。来年の最新刊のタイトルも発表されたし、まだまだ追いかけてくので。

小路先生、書き続けてくださいね。楽しみにしています!