おぉきにおぉきに。

京都盆地の南の端っこでのんびり暮らす主婦のつれづれ。

『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』を読みました。

 

 

『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 エラリー・クイーン/著(論創社)

ラジオドラマの脚本集、四冊目です。

有栖川先生の本格ミステリが大好きで、その流れでエラリー・クイーンの本家国名シリーズを読んでみたら超面白くてびっくりしてハマって、以来私は古典黄金期の本格ミステリといえばとにかくエラリー・クイーンですはい。つまり私のミステリ読み歴とともにEQがあって、長いこと読んできたなあと思います。ラジオドラマであっても楽しいのって凄い。

 

収録作品は、

〈見えない足跡の冒険〉

〈不運な男の冒険〉

〈消える魔術師の冒険〉

〈タクシーの男の冒険〉

〈四人の殺人者の冒険〉

〈赤い箱と緑の箱の冒険〉

〈十三番目の手がかりの冒険〉

以上の七作品。

 

編訳の飯城さんが解説でそれぞれ詳しく書かれているので、考察も何も特に要らないだろうと思うので。私の感想とか好きなところだけ。

 

ラジオドラマでもまあ短編集と言っていいと思うので、こういうのは表題作に向けて徐々にテンション上がるようになってるというか表題作はコース料理のメインのような位置づけだと認識してるんですけどもね。

 

私二番目の〈不運な男の冒険〉たぶん一番好き。

次に〈赤い箱と~〉かな。

 

てうか私もしかしたら、古典ミステリの法廷シーンが好きなのかもしれない。パーシヴァル・ワイルドの『検死審問』が私のオールタイムベストに入るくらいですし。

 

不運な男、いや、収録作品すべてに言えるけどどれももうトリックやら動機やらは現代では使い古されすぎてミステリ世界の空気に溶け込んでるようなものですが、当時としては相当にインパクトがあっただろうと思うしこれをラジオドラマという耳からのみの情報で聴取者に挑戦して成立したのも凄いなと思って。その中でもこの作品は、シンプルながらひっくり返し方が私好みだったです。

 

赤い箱と~、こっちはわりと早い段階で「うん?」てところがあるので犯人当てとしてはアレかもしれないですが、聴取者の挑戦が二回出てきてこれをラジオでやったのがすごいなあと。パパクイーンのウッキウキが可愛かった。

 

ラジオドラマの短い尺で愛憎入り乱れる複雑な人間関係を盛り込むのは無理があるせいか、どの作品も動機がめっちゃ分かりやすいw

誰かが誰かを庇うとか殺人を躊躇うとかそういうのが一切なく、みんな大変に下劣で(笑)さくさく読めます。

でもエラリー・クイーンなので。大都会らしくドライな展開といえばいいかな。

 

十三番目の~は、この中では長めの中編くらいなんですが、トリックとか犯行動機とかより、これは飯城さんの解説のとおりでこのミスリードはさすがやなあと思いました私も同じこと何回も考えましたもん。

 

現在の日本のミステリ界隈では、異世界設定とか異能ミステリとかが花盛りでいろんな驚きがありますが、私は元々がトリックよりもロジカルなミステリの方が好きで、保守王道の古典的な本格ミステリが大好きで、そして言いたくないけど年取ったせいか若い才能による新しいミステリについていけなくなりつつあるような気がしなくもなくて、最近は先祖返りしたように古典の新作(矛盾矛盾!)をもっと読みたいなぁと思うこともあります。

なので、エラリー・クイーンのこの聴取者への挑戦シリーズはマジで有難い。

 

えっと、別にわざわざ書かなくてもいいというか黙ってればいいというか、野暮なことかもしれないんですが……、最後の、日本での舞台版の脚本、要る……?

EQの原作から大幅に改稿されて(プロットは同じらしいですが)伏線や動機の追加とか、私が読んでるのはEQなのかそうではないのか……とちょっともやもやしたんですよね……私だけかな。

それなら大阪のP・T企画さんのチャラリー様、じゃなかった、舞台版エラリー・クイーンのシリーズを紹介してほしかったなあ……。舞台用に削ることはあっても、追加はされていないし、劇団の皆さんの本格ミステリ愛が炸裂してるし……。

 

ま、何にせよ、久しぶりのEQ。楽しかったです。